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賃貸住宅の入居者が「認知症」になったら――オーナーが頼るべき相談先

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イメージ/©︎lighthunter・123RF

賃貸での孤独死のうち高齢者は半分以下

高齢の入居者について、物件での孤独死を心配する賃貸住宅オーナーは昔から数多い。だが、これはややイメージが先行した見られ方というのが、実は正しいのかもしれない。

以下のような数字が出ている。一般社団法人日本少額短期保険協会が公表している「第6回孤独死現状レポート」によると、賃貸住宅での孤独死における死亡時の平均年齢は61.6歳。そして死亡者数は、65歳未満で全体の52%を占めるという。年代別の構成比は次のようになる。

孤独死・死亡年齢の構成比

出典/日本少額短期保険協会「第6回孤独死現状レポート」(2015年4月~2021年3月)

このとおり、賃貸住宅で孤独死した人のうち、高齢者と呼べる(65歳以上)年齢の割合は5割を切っている。

さらに、死亡年齢構成比のデータから、20代~50代までのパーセンテージを抜いて足し合わせると、ほぼ4割となる。

これは、賃貸住宅での孤独死=高齢者というイメージを突き崩すのに、おそらく十分なデータだ。住んでいる物件内で最期を迎えるのではなく、それ以前に各施設や医療機関、親族のもとなどへ身を寄せる人が、実際には少なくないことを想像させる数字ともいえそうだ。

一方、賃貸経営上、高齢の入居者であるがゆえに難しい問題がある。認知症だ。

高齢の入居者が認知症を患った場合、どうすべきかを考えておくことは、賃貸住宅オーナーにとって忘れてはならない大事な課題のひとつだろう。

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知っておきたい「地域包括支援センター」の存在

賃貸住宅の入居者が認知症を患っていることは、クレームで表面化することがある。あるいは、いきなりの事故で発覚する。

部屋がゴミ屋敷化して臭いが漏れ出したり、キッチンからボヤが出たり、排水管にいろいろなものを流して詰まらせたりといったケースが、たびたび耳に入ってくる。あるいは、本人自身がクレーマーになることもある。

私の知る例では、「〇号室に夜間ガラの悪い人が出入りしている。怖いのでなんとかしてくれ」というものがあった。

しかし、それはまったくのあらぬ疑いで、実は本人の妄想に過ぎなかった。一方、その方の部屋はといえば、足の踏み場もない、すさまじいゴミ屋敷となっていた。

こういった場合、オーナーや管理会社は、まずは入居者の親族など、保証人や緊急連絡先に状況を知らせ、対応を考えてもらうことになるだろう。

ところが、ここでいきなり話が行き詰ってしまうこともある。

「家賃は滞りなく引き落とされているんですよね。だったらオーナーさん側で対応して」など、思わぬ非協力的な態度をとられることがある。

あるいは、「協力したいが、こちらもすっかり高齢で動きようにも動けない」といったケースもないわけではない。

そうした場合、どこが相談先になるのかを知らないというオーナーは意外に多い。どうすればいいか? 「地域包括支援センター」が頼りになるだろう。

同センターは、市町村および特別区(東京)の責任のもと、それらか、またはそれらから委託を受けた社会福祉法人や医療法人、公益法人などが主体となり、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員等、必要な人員を配置したうえで、高齢者への総合的支援を行っている。

連絡先は、自治体のウェブサイトを開き、高齢者福祉に関する窓口を探せば大抵すぐに見つかる。

ただし、自治体によっては組織に独自のネーミングがされていて、地域包括支援センターとは一瞬判らないケースもある。若干、注意してほしい。

なお、同センターといえば、もっぱら家族の介護を相談する窓口と理解している人も多いが、そうではない。相談はどの立場の人でもできる。費用もかからない。

例えば、オーナーや管理会社が、「当方の物件で一人暮らししている高齢者が認知症になっている可能性がある」などと相談した場合、

1.オーナーなど、相談者への詳しいヒアリング
2.地域包括支援センターのスタッフが当該高齢者のもとを訪問、状況を把握
3.各支援につなげていく

といったプロセスで対応が進んでいくはずだ。管理会社のなかには、すでにこうした流れを幾度か経験し、勝手を知っているというところも少なくないだろう。

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協業で防ぐ「介護破綻」

ところで、さきほど、入居者が認知症を患ったことについて、オーナー側が親族などに状況を知らせたものの、非協力的な態度をとられてしまうケースがあることについて触れた。

一方で、逆もある。

当該入居者の子どもや親族が、心ならずも近隣に迷惑をかけてしまっている認知症患者本人の心境や、周囲の負担を思い、責任を感じるあまり、無理を背負い込むケースだ。危険な「介護破綻」のはじまりとなりかねない。

よって、そういった将来が少しでも予見されるならば、オーナーや管理会社は、彼らにむやみに重荷を背負わせるべきではない。

彼らが地域包括支援センターを知らないのであれば、その存在を伝え、できるかぎりのサポートもしてやるべきだろう。

高齢の入居者にとって、いま住んでいる賃貸アパート・マンションは、福祉・医療施設や子どもの家などではない、自立した意味での最後の住まいとなる可能性が少なからずある。

であれば、そこが本人にとって住んでよかったと思える場所になることは、オーナーにとっても大変意義深いことだ。

賃貸経営という事業を人生の一部を割いて行った、その重要な意味のひとつともなるにちがいない。

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編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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